実に不思議なオークションだった。主役は60年代の完全機械式一眼レフMinolta SR-1、ところがこの骨董品に付属して写真に映っていたのがこのMD Micro-ROKKOR100mmf3.5だった。MDという型番は同じMinoltaの一眼レフでもAFになる寸前、すなわちSRマウントi一眼レフの最終完成形Minolta XDがデビューした際に絞り優先もシャッター優先もどちらも可能な情報を制御できるレンズとして1977年に世に出たものだ。
開始価格が1000円。こんな売りますというより「あげます」みたいな価格なのに、誰にも相手にされず入札数=0だったのは平日入札だっただけでなく、いかにもジャンクカメラ本体を処分したいような目の止まり方だったからか、今考えてもわたしだけが応札したのが嘘のような物件だった。
さっそく送られてきたもの。こんな感じでごていねいにレンズフードまでついていた(135mm用だったので、つけてくれた?)。一式1000円なのでレンズの状態がどんなでも後悔しない覚悟でいざ点検してみると、これがレストアする必要がないレベルのクリアなものだった。レンズ単体で出展したらおそらく一桁上だったのでは?
スペックを調べるのに多少苦労した。100mmマクロはF4が有名らしく、このレンズなら情報があったのだが、ことこのf3.5は作例も含め情報がほとんど見当たらなかった。海外のMinoltaレンズスペックをまとめた人のサイトによると
[1978年発売 4群5枚 最短撮影距離0.45m フィルター経55mm f3.5-22 重量600g]
となっている。この前身は1973年製の MC Micro-ROKKOR QE 100mmf3.5でスペックを比較するとほぼ同一、となるとMD化されただけで中身は同じなのかもしれない。ちなみにf3.5の100mmマクロはこのレンズまでで、このあとはf値が4.0になり、重量は半分ちかく軽く385gにダイエットされる。プラスチックを使ってさらに小型化したのかも。
さっそくFUJIのX-H1にマウントアダプタを介して装着して撮影に出てみた。
地べたで咲いていたユリ?を撮ってみた。50mmマクロだとしゃがみこんで撮るアングルだがそんなことしなくても撮れるのは100mmの強み。MDMacro50mmほどボケに個性を感じなかったにせよ、いい意味で柔らかい模写はMinoltaらしくて悪くない。解像感はまあまあという感じでNikonのマクロみたいなキレは感じない。解像感より色気?キレキレを競うタイプでないのだろう。
背景のボケを試し撮りした。ちょっと騒がしい気もしないではないけど、これは程度の問題というかオールドレンズという括りであれば、むしろおとなしいようにも思える。このへんのニュアンスって主観だけど年代で変化していくんじゃないかな。77年って過渡期で、PentaxもNikonもここらからぐっと現代的になっているように感じる。そういう意味でへんなたとえだけど、いかにも70年代後半という感じがする。色味もまた然りで、わたしはとてもこの感じは好きだ。
100mm(35mm換算で150mm)の望遠単焦点レンズとして撮影してみた。我が家のオリジナルキャラ、ぷりんちゃんにピント。思ったより塗り絵的になっていない気がする。
王道の薔薇の顔写真。なにかすべてが集約されているような一枚に。いかがですか?
持ち出した第一印象はMD Micro-ROKKOR50mmf3.5のような手軽さや撮りやすさはなく、被写界深度の薄さに手ブレが追いつかないので、かなり難儀した。それにこのレンズとても重たい。600gもある。これは手持ちでバラをあちこちミツバチみたいに撮り歩くには不利な要素だ。
利点は遠くからマクロを狙えるから、むしろ花に着陸しようとしている昆虫撮影には向いている。あと柵があってそれ以上入れない花壇にもいい。
NikonでなくMiroltaを使うのはなんといってもボケの質だ。これは一度使うともう離せない。50mmには予備でもう一本用意したくなるほどの魅力があるが、一方のこの100mmはというと。
ちょっと微妙ですね、これも長いレンズだからボケ量が増えて、このバラの側面、ちょっと滲みが。この表現をどう取るかによって、このレンズの出番が決まると思う。
金属の質感はMinolta Macroの得意分野なはず。一緒に送られてきたSR-1に往年のレンズを装着して撮影してあげました。この売り主のかたはすごく几帳面なかたなのか、このボティはピカピカに磨かれていてそのままアンテークになるご覧のとおりの外見。このレンズはまさに60年代、SR-1時代のもの。後玉の曇りが取り切れず実用にならなかった惜しいレンズだったけど、使い道ができた。
このボディにつけて飾っておこうと思う。
Minolta MD Micro-ROKKOR50mmf3.5をうっかりリサイクルショップで手に入れてしまってから、すっかりわたしはこの40年もまえのレンズの虜になってしまったところに、この100mmがやってきた。おカネがなくて純正のカメラもレンズも手の届かない、けれど撮影が日常のわたしにとって、この2本はまさに救世主というか写真の神様からの救援物資なのだろう。この2本のマクロで、またしばらく撮影に向き合える。
オールドレンズなんだろうけど、お見せしたこの写真たち、どうです?
いまのレンズって言ってもバレないのでは?
この頃のMinoltaってすごいですね。