みなさまこんにちは。えらく久しぶりでスイマセン。「ナガイネ!」フンドシブログ、今回は長いだけでなく、ツアー写真のおまけつきで、とてもとても長いです。
さて。
ツアーから帰りましてすでに10日、日常に帰ってもどこかスイッチが切り替わらないワタクシでございます。
十日町、秋田、弘前、三沢、仙台、女川、石巻のみなさま、そしてこのツアーをネットで応援してくれたみなさま、ありがとうございました。
そんなで、ワタクシ。
今年冬より生活を変えまして、ある時はギターの先生、そしてあるときはギター講師の看板ををそっと隠した貸しスタジオのスタッフ…、でもって、その正体は「旅芸人」。
そんな貸しスタジオ。ツアー前にこんなことがありました。
このスタジオはつくば市の郊外にあって、というか畑の中にポカーンと建っていまして、まだ出来て1年半。スタジオにはピカピカのマーシャルアンプ(ここをお読みのかたにはどんなものだかわからないかもしれませんが、ハードロックなどで使う、タンスみたいな大型ギターアンプ)を兼ね備え、筑波大生や地元のイカれたヘビメタなあんちゃんの練習の場となっております。
スタジオのドアが少々薄いので、音漏れがけっこうするんですよ。なので、来てくれる人たちの演奏を聴くことが出来ます。監視カメラがついているので中の様子も伺うことができます。
8割がヘビメタなあんちゃんたちで、ワタクシがこのお手伝いに関わらなければ一生聴くことはなかったであろう、このスタイルの音楽。
その日、やたらと気合の入ったギターの音がスタジオ内から聞こえてきましてね。こいつらいいぞ!ってバンドは3つくらい常連さんで来るんですが、こいつは少々飛び抜けている。
陳腐な表現ですが、音に魂が乗っかって、スタジオのドアを突き抜けて私に迫ってくるような。なんとも言えない心を揺さぶられる感じの音。監視モニターにはしっかりと弦にピックが掛かっていてムダのない、今どきの子にしては珍しい、楽器にとって健全な弾き方をしている。
終了後、そのギターを弾いていた20半ばくらいのあんちゃんが、スタジオから出てきましてね。
それがね。
目がハートマーク♡になっていて、足なんてよろよろ状態。まるで初めてソープランド行って魂抜かれてモウロウとしている少年状態。
聞くと、このスタジオのマーシャルアンプが今まさに運命の出会いだったと。
それまでこんな歪むだけのアンプ、バカにしていたんだけども、ここのは違う、これこそ求めていた音だと言う。
そして、これ売ってくれませんか?とまで。
レンタル器材だから売り物じゃないんでねー、と言っても、ならどこで売っていますか、どうしたら手に入りますか?もうメロメロな様子。
音というのはほんとうに不思議で。
そういう状態の時、一目惚れした初恋の相手に出会った時、心が踊る音になるんですね、彼の♡目や話を聴く前に私が「こいつはすげーぞ」と気がついたわけだから、まんざら思い込みな話じゃなく。こんなことってあるんだな。
彼は少々古いハードロックバンドが好きで、それはAC/DCという我々世代のバンドらしいんですが、どうやったらあんなに太い音が出るのか、家でyoutubeを何度も何度も見ながらそればっかり研究したり練習したりしてきたとのこと。横で仲間のドラマーが「こいつ、シンコペーションって言葉も知らないんすよ」とバカにしていたけれど、独学だから理屈はわかんないんす、とのことで。
でもいいものはいいよね。私のようなオヤヂが初めて会った(正確には会う前の)きみのギターサウンドに一発で参ってしまったわけです。スバラシイと思うよ。
で。
ツアーから帰って久しぶりにスタジオを見てみますと。
彼がメロメロになったマーシャルが別のものに変わっていました。
どうやら、店員に掛けあって、これまた気合でなんとか売ってもらったようでした。
はっはっは、気合か。初恋のエネルギーは何にも勝るよね。
音楽のチカラですねこれは。
ジャンルも年代も飛び越えて、スタジオのドアさえ飛び越えて、見知らぬ他人の私に関わってくる音。正真正銘の「音楽のチカラ」ですよ。
研究に研究を重ねた腕前があったから、きっとそのアンプも本気で鳴ったんでしょう、そんなほんとうにいい出会いだったと思うと、その瞬間に立ち会ったこちらも嬉しくなるじゃあないですか。
…。
先週、生徒がひとりやめていきました。
この土地を離れてしまうからもう通えないとのこと。
この子は、20そこそこの女の子で。きれいな子なんだけども、つまりヤンキー風。学生ではないということで、職業は聞かなかったというか、なんとなしにわかったのでプライベートなことは聞かなかったけど年齢の割には苦労している感じ。いつもマスクしてきて、ちょっとおっかないというか、そのマスクに「夜露死苦」とか油性のマジックで書くとドンピシャリというか。まあワタクシ世代でいうところの、ツッパリハイスクールなロックンロールかというと、まあ外見はそうなんですが、やりたい曲は昔の昭和フォーク、なごり雪とかユーミンとか。今どきの曲でなくていいの?と聞くと、今の曲はつまんない、昔の曲はおかあさんが好きだから私も好きだとのことでした。
いつも無愛想に約束の時間にJRのように正確に現れて、終わるとこれまた無愛想にさっさと帰っていく。中学の時に親に買ってもらったらしいギターは高いものではなかったけど、レッスン開始時には必ずチューニングがすでに正確に合っている。家で合わせてきてるんだな。
本人は全くの初心者と言うのですが、どうやらもっと若い頃に一度でも本気で音楽をやろうとした痕跡があるように感じていまして。これもいろいろ事情がありそうだったのであえて触れずに、とにかく強引にというか隙を空けずにリズムに乗り遅れないような夜露死苦レッスン?を行った。こっちも本気ですからワタクシ昭和歌謡で一人ノリノリのお尻フリフリ。どうです、イタイでしょう第三者が見てたらこのオヤヂ。でもここは音楽のチカラの見せどころ。
そしたらですね、なんとかついてくるんですが、その時に限っては、ヤンキーな娘どころか無邪気で可憐な笑顔の美少女になってしまうんです。
終わるとまた夜露死苦な娘に変身してしまうところが、実に痛快だったけど。
音楽には年齢、性別、国籍、ジャンル、なーにも関係ない。おまけに副作用もない。聴きたくなければ聴かなくてよいし、弾きたくなければ押入れにしまっておけば楽器は次に弾かれる時をじっと待っていてくれる。
音楽のチカラですよこれも。
やめてから数日して、風貌から察すれば来るはずもなかろう、この子からお礼のメールが届きました。ギターは楽しい、これをきっかけにしばらく独力でがんばって練習していきたいとのことでした。
…。
ツアーは天候にも恵まれて、大きなトラブルもなく、何よりお客さんに恵まれまして、上々の出来でした。
我々を待っていてくれていただいたみなさんに心より感謝しています。
また今回の旅の裏テーマは、「再会」と私は勝手に決めていて。
渋さの同期であるあきあや夫妻との再会、いつも応援してくれている弘前の山谷さんとの再会、7年前十和田ででっかいコンサートを企画してくれた松本夫妻と、その時お世話になったみなさんとの再会、仙台では本拠地東向島や以前ツアーでお世話になった岩手県遠野市からわざわざ応援に来てくれたみなさんとの再会、そもそもこのバンドのメンバーは現在居住地が九州だの京都だの茨城だのとバラバラなので、メンバーとの再会。人だけじゃないですよ、青森ラーメンとの再会、津波被災地との再会…。
ケンジ師匠のブログに私がここで書こうとしたことが集約されていました。
:日本中に タンゴの生演奏を 待っている人がいます
:みなさまのところに タンゴを お届けいたします
はっはっは。待っている人がいます。人数はともあれ、これは事実です。存在理由としてこれで十分です。ありがとうございます。
…。
我々は異空間を作ります。ケンリリ師匠を中心として、始まってから終るまでの間は、異空間です。
そもそも私は若い頃、つくばのAKUAKUというライブハウスに、この異空間を求めて通ったんですね。
辛島文雄トリオ、板橋文夫、フェダイン…、そして今でも強烈に記憶から離れない異空間なライブは、金大煥、井野信義、梅津和時のトリオによる演奏で。
忘れようもありません。
異空間に引き込まれ、私は異空間の中で旅の景色を見て、それは自然と共存していく素朴な人々の強さのような、金大煥さんのプクと呼ばれる韓国の太鼓がその訥々とした動じない強さを演じていて、私は歌詞のない音楽ではじめて感涙をしてしまいました。音楽のチカラをもろに感じた経験でした。
その後、97年にテントツアーで参加した渋さ知らズはまさに手作りテントという異空間を大胆かつ現実的に演じた圧巻のもので、そこで私はリリアナさんリマさん、室舘あや小野和など多くの仲間と出会うんですが、我々の遺伝子たるものがあるとすれば、この異空間、それぞれがどうやって創りだしていくか、ここをテーマにしていることだと思うんですね。
それは己の発表会とは逆方向にあって、かつ単なる仲良しクラブでもない、自立した個人が集まって創りだしていく何らかの共同作業であるような。
お客さんはこの異空間にオカネを払っていただける。ただ始まって終るだけのカラオケライクな演奏ではオカネをむしろ演じる側が払わなきゃなりませんよね。
タンゴでもジャズでもデスメタルでも弾き語りでも、生音でも装置を駆使して仕掛けたものでもどちらでも、何でもいい。正統派だろうが色物であろうが、譜面があろうがなかろうが、異空間を構築できればまずはよいのでは?と私は思います。
つまり異空間が演じられるかどうか。
タンゴにせよ何にせよ。ケンジ師匠のお言葉を拝借すれば、
全国にタンゴの生演奏を利用した、すなわちそれはつかの間の夢とキボー、ダンスによる男と女の光と影&すぎゆく時間と思い出、音楽のチカラを信じて洗脳されバカになった我々の姿、そんな異空間を
お届けしようと。
はっはっは。長年いろんな音楽やってきまして、今私はこういう異空間を演じる
「 旅 芸 人 」
をやっております。
というか、ツアーそのものが我々当事者にとっても異空間なのですね、これは久々に日常を取り戻したワタクシには新鮮な発見です。
異空間をお届けする と、目的がハッキリしているので、今はこれで満足です。
やっていることはアルゼンチンタンゴです。
やるからにはタンゴという実に難解な音楽をナメるわけにいきませんから、自分なりにまたコツコツ勉強して、堂々と私が考えるタンゴなギターを異空間の要素に加えていきたいと思います。
我々の現場の多くは、コンサートホールみたいに照明つき音響つきじゃないので、譜面通りだけの演奏じゃどうしても異空間が作りにくいんで、やはり(ここ、ずっと考えたんですが)譜面をはみ出すくらいの圧倒的なスイング感が、私の持ち場と思います。かと言って致命的なミスや馴染まない変な音を出すと異空間にいるみなさんがハッと我に返って「今何時?」みたいになってしまうから、残念ながら演奏力も必要ね。
つまり、照明も音響もないところでも異空間をお届けできるのが、フリーランスの集合体である我々が得意とする仕事ってことです。
…。
現在ワタクシの隠れ家となっているこの貸しスタジオにいろんな若者がやってきて。
いいバンドになると、ジャンルなんてやっぱり関係ないんですね。私はこういうシンプルな音楽は今演奏することはないけども、共通してるのは演奏力と「気合い」だよね。
今回のツアーはね、ここで出会ったイカれたあんちゃんたちの気合いを味方につけて行ったのでした。はっはっは、誰も読んでいないだろうけど、みんなにこっそり感謝してます。
…。
私は今回このツアーに来ていただいたみなさんの呼びかけにこう答えることを思いつきました。
「また 来年 会いましょう。」
来年ね。
来月じゃ早いでしょ、でも10年後じゃ双方に欠員出てるかもしれないし、ちょっと再会には遠いよね。また来年ってちょっといい長さですよね。親戚の家に遊びに行く長さというか、そんな心地よい長さ。
そんなで。
十日町、秋田、弘前、三沢、仙台、女川、石巻のみなさん、また来年お会いしましょう。今回立ち寄れなかった、遠野、いわき、水戸のみなさんも来年までにはまたお会いしましょう。
秋のツアーは、まだ詳しく聞いてないんですが、おそらくこちらも再会の旅になる予感です。少々長い旅とだけ聞いています。
:日本中に タンゴの生演奏を 待っている人がいます
:みなさまのところに タンゴを お届けいたします
*今回のツアーで思いもよらず、このフンドシブログ読んでます と声をかけていただきました。うれしいです。がんばります。
スズキイチロウ
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旅の記録:おまけ
★シー様の青森
本人がどうしても譲れないと言い張る青森港のまるかいラーメンは、煮干しダシのラーメンというかラーメンみたいな和風麺類というか地元のかたでも賛否両論のキワモノ店。ところが今回弘前の山谷さん曰く、ここ弘前にはもっと強烈なラーメンがあるという。
11:14噂の「たかはし中華そば店」に意気揚々と突入するシー様
11:20 ラーメン到着
お味は…。
この笑顔のような味。(煮干しで酸っぱいというキワモノですがご本人はそれが好きな模様)
そして車で弘前から青森に移動し…。
14:26 青森まるかいラーメンにて大盛り シー様、また来れてよかったね。わずか3時間で夢にまで見た至福の時が2回も来てほんとうによかった。
ただ付き合わされるメンバーはたまったもんじゃありません。
それでもつられて完食。下を向くと出てしまうのでこのポーズのまま動けないかわなみ。きみはいつからそんな子になったのかな。
今日はツアーの中日でオフなので温泉で休暇、宴会のための食材を青森駅地下の市場で仕入れます。
演奏中より鋭い目つきのシー様。
シー様のためにリリねえさんが弘前でいただいたリンゴにオリーブオイルとアンチョビでオードブルを作ってくれました。
ご満悦のシー様。まるで慰安旅行に来たスーパーの店長のようです。
まだ明るいうちですが始まりました。
ご満悦のスーパーの店長とパートのおばちゃん。明るいうちから店長モテモテでよかったね。
おわり。
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番外編
★リリアナねえさん
渋さの頃、真面目なワタクシはいつも集合時間前に現場に行っていたのですが、いつでも先にねえさんが来ていました。
今回もホラ。
集合場所に一番乗りのねえさん。渋さの頃と同じです。
ねえさんは何か国語も仙台弁も話せるマルチリンガルなインテリなので本を読んでいます。
渋さでは「さやかさん」ですがタンゴではリリアナさんです。なのであきあや夫妻は「さやか姐」と呼び、ミユキタンゴでは「リリアナさん」と呼ばれています。
舞台での晴れ姿はこうで。(今回のツアー写真でなくてスイマセン)
タンゴのダンスは男女ペアで踊るため、その裏側で入念な打ち合わせ。
付け入る隙のないまさにプロの世界ですね。
…。
ねえさんはワインが大好き。打ち上げも大好き。ワインが進むとさらに全力投球で
演奏後の打ち上げ。まず三沢の名ドラマー、なぎらPONTAに乱入
そして
踊る…。
おへそ出てます。
全力投球後は…、
電池切れ。
…。
弘前で頂いたきれいなりんごと素敵なねえさん…。
で、ここでダンスかと思えば…。
暴走…。
おわり。