私とってタンゴとは一体なんだったのか新春特別版 Nunca Tuvo Novio

みなさまあけましておめでとうございます。ナガイネ!のフンドシブログ2014年版のはじまりでございます。

年末にタンゴへの愚痴をブウたれて一年の締とさせていただき、つまり「書き逃げ」をしようと「私にとってタンゴとは一体なんだったのか」というフンドシを書かせていただいたところ、マリアは死んでもマリアは死なない、そんなタンゴの夜の神に目をつけられたのか、一年前、このネタをお笑いにして書いたときからすでに目をつけられていたのか?
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このネタです。

新年にこうして続編を書く運びとなってしまいました。

…。

この話は一年とちょっと前からはじまります。
一年とちょっと前、私は北九州のバンド、トリオ・ロス・ファンダンゴスのツアーに参加しました。確か水戸の打ち上げのあとだったか、宿への帰り道に、バイオリンの谷本氏とひょんなことからあるCDの話になった。それは私の数少ないタンゴの愛聴盤で自分のバンドの手本にもしているあまりタンゴらしくない、でもタンゴのスタンダードだけをやっているちょっと変わった作品で。今調べてみたんですが、youtubeにもアップされていないようなマイナーなもの。これを彼も好きで良く聴いているという偶然。
その中に入っているバラードNunca tuvo Novio。
「イチロウさん今度ヌンカやろうや」 というところからこの曲をチェックすることになりまして。

昨年秋のツアーは実は春からおおよその予定が決まっていました。

それはワタクシにとってとても困ったものが仕込まれていて。

一日目の桜座。リマタンゴと対バン、ここまでは良かったんですが、ゲストがいるとのこと。そのゲストとは私にとってアマチュア時代から神様のようなギタリスト、つーか私の神様。一曲目にそのかたと何かやれということが私の知らないところで勝手に決まっていて。

みなさんにとってはなんだ大袈裟なと思うようなことでしょうが、私本人にとっては共演するだけでも、一大事というか、実は将来の夢でずっととっておいたことだったので、例えて言うところの、10年先にお遍路で会いに行こうと決めていたら、弘法大師様が新幹線に乗って、しかも八重洲からつくばセンター行きの高速バスに乗り換えてこっちに向かってます、今からギター用意してノバホールまで来てくださいみたいなことで。
しかし。

それがよもやタンゴとは全く思っても望んでもいなかったので、もう人生の予定が狂ってたいへんなことだったわけです。

18日にも及ぶツアー初日の一曲目。音楽の神様はたまにこのような意地悪な試練を与えるものかと。

誰も相談相手がいないまま、ツアーの用意=この一曲をどうするか、それに身も心も費やしてしまい。
相手はジャズのかたですから、いくら私の神様とはいえ、もろタンゴを当日だけの準備でやっていいものか、しかしツアーはタンゴ、つまりタンゴとつながりのある出し物を当日何かやれということ。最終候補に残ったこのNunca tuvo Novio。この曲はバラードだしコード進行もジャズっぽい。これにするか私の曲か。

出発前から何度も何度も、旅の準備をぶん投げてひとりでずっと弾いて練習をしました。

最終的には、泥をかぶるなら自分の曲という判断で、Nunca tuvo Novioを諦めて、風の吹く町 にしまして。

この曲はこの時点で私の中で宙に浮いてしまった。

以降、ライブの半ばでたいがい用意されるバンドネオンとギターのDUOで数回この曲を演奏しながら。

このツアーは終盤に北九州、ファンダンゴスとの共演も用意されていました。

ヌンカやろうや

喉まで出かかったのですが、現場の流れがDUOをやれるものでなく、私は迷いに迷ったままこの言葉のタイミングを失ってしまいました。

ファンダンゴスは自分たちのステージのラスト前の聴かせどころで、珍しくお笑い方面でもなんでもなく、ただ真剣にバラードを演奏しました。それが言い出せなかったNunca tuvo Novioでした。

こうして、私のNunca tuvo Novioは傷だらけで宙に浮いたまま、長いツアーの切ないお土産になりました。

…。

Nunca tuvo Novio。邦題が「恋人もなく」、サビの途中から可愛らしく転調しているのが特長ですが、その転調感が実にしおらしい、え?そういえばCなのに気が付くと一瞬Em、そこからCでいうところの4度に戻るんですが、このFのメロディが#11 ジャズのアナライズ的に見ても、実によく出来たバラードで、タンゴはこういう大名曲があるから一度覚えるとやめられない。

タンゴにはこういうふうに悪魔がすみついておりまして、こんな難しい音楽やめてやろうかと思うたび、ギターを抱えるとつい弾いてしまいます。

…。

ところがこの話はこんなオチに発展してしまいました。

話の続きは数日前の、大晦日。

ボーカルのカズマに誘われて、雑司が谷のエルチョクロの忘年会に行きました。

最初はマスターとバイトの子たちの店内忘年会かな、くらいに思って気軽に立ち寄りましたところ。

扉を開けてビックリ。店内そうそうたるタンゴの演奏家でいっぱい。店のイベントスケジュールやyoutubeや大河ドラマのBGMでお目にかかる、なんだなんだこの会合は。そういうことならそうと最初っから言ってよ。

たくさんの人の中に、youtubeでよく拝見している本国アルゼンチンなギターの先生も。

ブラーボさん?

なんと彼は私の名前を知っていたという。それ野球選手では?

とても嫌な予感が。マスターの思惑。

つまりこの忘年会は、この店の出演者による、ジャムセッション。

ジャムセッションの組み合わせはどうもマスターが決めるようだ。

嫌な予感、見事に的中。マスターと目があってしまった。

この忘年会の一曲目、ブラーボさんと、ワタクシにお呼びがかかって。

はじめてお会いして、二言くらいしか会話していないこの局面で。

店内、み〜〜〜んな名だたるタンゴミュージシャン。

あの時と同じように一曲目。これは、イジメ?今年は最後の最後まで。

ギターを用意したところでブラーボさんが言いました。

ヌンカをやりましょう

…。

音楽の神様はたまにこういう粋なプレゼントをくれるから。

この一年、何度もタンゴなんかやめたるわいと思ったけれど。

やめるにやめられないではないか。

みなさま今年も一年、がんばりますので、どうぞよろしくお願いします。

2013-12-30 03.22.07_800

 

 

 

 

 

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