みなさまこんばんわ。
タンゴ解説シリーズがひととおり終わりまして、少々気が抜けてしまいました。
本日よりまたフンドシブログの再開でございます。
ナガイネ!で勝負のフンドシブログ。
そんなことを書き垂れているワタクシ、スズキイチロウというギター弾きなんですが、昨今はタンゴばかり演っているからか、
先日も演奏後、常連さんに。
「へえ、イチロウさん。ジャズも弾けるの?」
「も」ってナンダ。
ちょっと前も
「この人、スズキイチロウさんって言って、タンゴギタリストでね、趣味でジャズも弾いてんの。」
と紹介されてしまいました。
うう。
でも仕方がないですね、昨今は黒い服着てガットギター持って演奏してる姿しか知らないかたが多いんで。チラシやネットのライブ情報なんかでもエレキを持っているものがほとんどない。ということは、ワタクシの昨今のイメージは民族音楽な人か、それとも演歌の伴奏の人みたいな印象でしょうか。
では。ここいらをキチンと説明しておかなければなりません。
ワタクシは、まあつまり、ダラダラと長年やっているだけの、力のないギター弾きなんですが、ではその専門はといいますと「即興演奏家」で。
a.タンゴを弾くギタリスト
b.ジャズを弾くギタリスト
c.これらのものを利用した音楽を作って弾くギタリスト
若いころにはいろいろやってきたんですが、今の内訳はこうでしょうか。本人はこのように自覚しています。
あ、最近は
d.フンドシライター(フンドシ文を書く人のこと)
も追加したいところですがこっちはまだまだですね。
というわけで、おそらくみなさまが「ああ、そういえばそんなページあったんだ」と思っている、若しくは全く気づいていないであろう、ワタクシのこのサイトのMP3配信コンテンツから強引に楽曲を紹介しまして、いろいろ書いていきたいと思います。
つまり今度は、ジャズに馴染みのないかたに向けて、自分の音源をいじりながらお送りしようというわけです。
誰も読まないだろうなあこの企画。自分のオリジナル解説されても、私なら読まないな。正直言って失敗だな。
でも開き直って書けるところが、「自己サイト」の強みです。
本日はコレ。
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タンゴ解説にも登場しました、トウモロコシ、Kiss of Fire、火災のキッス、また裏の名をポコチン。
タンゴの名曲、El ChocloのイチロウQバージョン。
2008年入谷なってるハウスの演奏で、オヤ?もう5年も前のものです。
8分以上あります。はっはっは。タンゴは短くないと踊れないって話しで落ち着いたばかりですが。
スイマセン、これタンゴかと言われればそうではないんで。
上記c.のジャズやタンゴを利用した音楽のつもりです。
楽曲は枠というか、ひな形というか、つまりテンプレートとして扱っていて。
基本的にアドリブです。
編成は、バンドネオン、ガットギター、バスクラリネット、それにパーカッションです。
youtubeでなく自己サイトで直接配信できているのは、この曲はとても古い曲ですでに著作権フリーになっているからです。
この演奏を振り返ります。
バスクラリネットというのは、クラリネット属の中でいちばんかどうかわかんないんですが、つまり低音極太クラリネットで、通常の音楽だとあまり使わないかな。ではどれだけ低いかと言うと、実は案外ギターの低音とかわりがあまりなくて、お互いに音程を聴きながらカブらないように役目を探しながらやっています。
パーカッションはカホンとタブラと変な壺(売るためのものではなく灰皿でもなく、叩くとボヨ~ンと音がする、妙法寺の縁日で売っているような変な陶器の壺)あと金物が少々。
エンディングでバンドネオンがアレ?音がヘナヘナと小さくなってどうしたの?という箇所、これは演奏者が興奮して、バンドネオンの取っ手についているベルト状の輪っかをブチ切ってしまったため、それでもなんとか片手で弾いているというたいへん貴重な記録です。尾崎豊みたいですね。ライブ音楽はこうでなきゃね。
このバンド編成は、まあお手本があるにはあるんですが、それをコピーしても意味がなさそうなので、それも利用させてもらって、ジャズのアドリブ要素を基本的に全面に出してやろうという試みでした。
この日に演奏したスタンダードのタンゴはこの曲と、あと軍靴の響きとアディオス・ノニーノくらいだったかな。これはこの頃まだワタクシがタンゴのスタンダードを多く知らないだけではなくて、知っている曲でもこの手法になかなか馴染まなかったんですね。どう馴染まなかったかというと、ただテーマのメロディやってそのコードでアドリブやっても、じゃあジャズの曲でいいじゃんという音がしてしまいました。
ここが難しいところでした。
で。どうしたか。だったら自分で曲を書くなり、過去に書いた曲をこの編成用にアレンジしてしまえばよいかと。
その中で数少なくこの編成でなんとかなったタンゴスタンダードがコレです。
アレンジしてしまえばなんていってますが、このバンドはみなさんとても優秀なので、いろいろ書く必要がなく、というより書かないほうが面白いので、譜面はジャズでよくあるCメロ譜面です。もっともらしいコードを付け直して、後はどこで始まってどこで終わるかくらいしか書いてません。この曲なんか、基本的に元の楽曲をA7だかDmで水増しさせただけです。
どうです、これで音楽にしてしまうところがすごいでしょう。(このメンバーが。)
私が長年やってきたジャズはこうして、全体の音と相手の音を聴きながら、そんでもって自分の居場所を捜しながら進行するものがほとんどでした。
これ我々にとっては当たり前中の当たり前な方法なんですが、案外どうやっているか知らないかたが多いみたいです。特にクラシック方面から音楽をやられているかたは、何で譜面ないのに出来んの?と思われる箇所らしい。
解説します。
ワタクシは平たく言えば、モダンジャズ以降のジャズのスタイルをジャズと呼んでいます。それ以前のジャズ、すなわちスイングジャズと言われるビッグバンド編成のものやデキシーランドと言われる2ビートのジャズは聴くことも演奏した経験もほとんどありません。
モダンジャズ、このスタイルの特長は、具体的な「ダンス」という概念がないということです。一見、聴かせる音楽です。というか、Cパーカーなんかテンポが速くてこれじゃ踊れません。
ではクラシックのように音響のいいホールで正座して聴くものかというと、そうではないんです。
これは確か成孔さんの本に書いてありましたでしょうか、脳内で踊る、脳内ダンスを楽しむもの、全く同感で、ワタクシもそうやって聴いてきました。
聴く音楽のふりをして、実際はダンス音楽を継承しているわけです。
だから、リズムはタンゴ同様、とても大切です。
譜面なしで何でできるか、この話と関係なさそうで実は大いにあります。
メロディをアドリブで即興作曲する方向だけだとバッハとかメセニーとか恐山のイタコさんとか、そのクラスの天才でないとそう簡単にはそんなもん出てこない。ジャズに馴染みのないかたは、これをやるのがジャズアドリブの中核だと思い込む人が多いみたいなんですが、そんなこと私にはできません。
それに対して、リズムという要素は簡単と言えば簡単なんです。例えれば椅子取りゲームのようなもので。
音階は12もあって、それが何オクターブかありますから、そのどこを瞬時に感じてつなげていくか、これは理想通りにできたらそりゃあ木に登るほど嬉しいことですが、確率論から言ってもかなり難しいことなんですね。さらに単音を独奏で行うのではなく、他人様と行う合奏ですから自分の意志通りにいく確率はさらに低くなります。
ところがリズムは極論すると表と裏、この2つしかありません。
これをまずベースに利用していくと、おおまかな流れとか主題が案外見つかる。自分が見つけられなくても誰かが見つけてくれてこれで行こうぜみたいなことも多いです。これを聴ければ相乗効果で事が運んでゆくと。
事が運び始めると、流れが出来て、確率論で難しい即興作曲みたいなものもパチンコでいうところの確変状態に。なるといいなあと。
モダンジャズというよりはフリージャズの発想かな。
この演奏は、実は打楽器があまり演奏を煽っていませんよね。これは意図的にそうしてもらっています。淡々と16のパルスをやってくれって頼みました。楽曲と別の方向の「枠」というかプロレスでいうところのリングです。
それ以外の楽器がリズムの表と裏を取り合うようにして、スイングさせながら、その行為自体を会話として演じようと試みています。
表と裏の会話、リズムがある音楽の常套手段ですね。これ、ジャズの4ビートと全く同じ手法です。
この手法に、私はジャズもタンゴも、かなりのウエイトを置いています。
いくらキレイで正確な演奏をしても、スイングしてなきゃね。
まあ解説はこんなです。なんとなしにお解りいただけましたか?これじゃわかんないよね。この話はもっとまとめてまたいつか書きたいと思います。
ではこのリズムとやら何で必要か。
何でか?
これがしっかりしていないと、お客さんが腕組みをしたまんま聴いてしまうからです。
ここがクラシックとの違いでしょうか。いい悪いの話じゃないですよ。
クラシックは予めコンサートホールという環境で、禁酒、禁煙、禁おしゃべりというマナーもあって、チケットを予め買って臨む。つまり音楽を聴く体制が守られているんですが、我々が演じる場所の多くはそうでないんで、いつも聴きにきていただける常連さんに混じって、会社の帰りに飲んだあとの二次会とか、そういうお客さんが音楽でも聴いて帰っかと、ふらりと立ち寄るわけです。
さっきまで部下のOLさんが唄うカラオケ姿、それも足とか尻とか見てウヒヒと思っていた課長さんが、そのお礼かどうかわかりませんが、もう一軒どう?とか言って、その足や尻のOLさんを連れて立ち寄ってくれるわけです。
その環境でどこの誰だかわからない我々が、しかもジャズやタンゴを利用した正体不明なオリジナルをやるわけです。お客さんはたいがいはじめて聴く曲ばかり。
なので演じる側と聴く側、最初はどうしても距離がありますんで、これを縮めていかないと、音を共有する状態でなく、対峙する状態になったままライブが進行してしまいます。
こうなると我々も課長さんもやりにくいんですね。こっちは即興演奏が主体ですから、少々のリスクが伴います、つまりはみ出たりアレ?今の音は…、しまいには取っ手がとれたよ~みたいなハプニングがどうしても生じます。我々はこれをも利用して音楽にしていこうとするんですが、これを間違えたとか失敗したとカウントされるとこの手の音楽は面白くもなんともないんですね。
だったら譜面書いて再生したほうがいいか、取っ手は切れない素材にしてボルト締めにしたほうがいいと課長さんにMIXIで書かれてしまいます。
この腕組み状態を解くには、さだまさしみたいな上手なMCも有効なのでしょうが、いちばん手っ取り早いのが、リズムでほぐすという手法だと私は習ってきました。で、今でも得意な手法として使っているわけです。
まさにマイルスの常套手段ですねこれは。
同じお店でも、日によって環境は同じではないのでね。
同じオヤヂ族として、課長さんの面目も保ってあげたい。
音色やメロディを楽しみたい、つまりすでに聴く体制でいらっしゃるかたにとっては騒がしい曲ばかりは歓迎されないかもしれないけれど、はじめて聴くかたや上記のOLさん同伴の課長さんには、挨拶代わりにスイングさせたリズムを飛ばしに飛ばして、まず腕組みをほぐしてですね、みなさんと仲良くなりたいですから。
お客さんが心を開いてくれさえすれば、直接心に訴えるようなバラードも聴いていただけるかと。
OLさんうっとり。課長さん面目維持。顔が勃って、なんだこの変換は。顔が立って、ああ良かった。
これも全くマイルスの手法ですね。
ここがライブという、コンサートや録音物とは違う音楽の醍醐味のひとつと私は考えています。
…。
この編成の私のオリジナルバンドはジャズ編成のものと分けるために、イチロウQの後にver2.0と書いて区別しています。(ジャズ編成のほうはver1.0です。)
今年、一度は演りますから、どうかOLさん連れて聴きにきてくださいね。
2 comments for “El Choclo イチロウQver2.0 2008”